
株価の変動は、基本的に需要と供給によって決まります。
需要と供給に影響を及ぼす要因としては直接的・間接的なものを含めて様々あり、複雑に絡み合っています。
1つの要因だけで株価の動向を予測することは難しいですが、いくつかの要因を注視することで投資判断に役立てることができます。
当記事ではいくつかの基本的要因を例に挙げて簡単に解説します。
複数の株価変動要因
多くの銘柄の株価は、証券市場の営業時間内取引で変動していきます。
株価の変動について、直接的に作用するのは需要と供給の関係にあります。
その株を『買いたい』という人が多ければ株価は上がり、『売りたい』という人が多ければ株価は下がるようになっています。
需要と供給に影響を与える要因については、『市場全体の要因』と『個別要因』に分けられます。

市場全体の要因については『企業努力と関係のない事象』から影響を受けるのに対し、個別要因は『企業努力の成果』によって需要と供給に影響を与えるという特徴があります。
市場全体の要因
『企業努力と関係のない事象』について個別に見ていきます。
景気
景気が良くなると株価は上昇しやすくなりますが、悪くなると株価は低迷する傾向にあります。
注意したいのは景気と株価は連動しないということです。
株価には景気を先取りして動く特性があるの、普段の日常生活から実感できる景気の良さと株価の変動にはタイムラグがあるので気をつけましょう。
- 景気のサイクルと景気指標
景気のサイクルは知れば、今現在と照らし合わせて次の景気の動向に、ある程度目途をつけることができるでしょう。
景気指標から景気動向を探ることができます。
為替
自動車メーカーや電気メーカーなどの『輸出企業』は、『円安』になると商品が輸出しやすくなり、利益が『増える』傾向にあります。
反対に、電力・ガス、食品などの輸入企業にとっては、円高の方にメリットがあります。
日本は資源が少ないことから加工産業として発展してきた経緯もあり、輸出企業の存在が強く円安になった方が日本市場全体の株価は上がりやすくなります。

- 為替が株価に与える影響
為替による影響は一時的ではありませんが、どのように関連しているかの概要を解説しています。
金利
一般的に、金利上昇は株価下落、金利低下は株価上昇の要因になります。
理由は複数ありますが、例えば金利上昇によって定期預金や国債などの金融商品の魅力が高まれば、リスクの高い株式からそれらの商品に資産を移そうという人が増えるといったケースがあります。
また企業にとっては、金利上昇によって銀行から借入金(借金)を控えるようになり、設備投資が抑えられ、成長が止まってしまうという影響が考えられます。
政策・政局
政治も株式市場の大きなインパクトを与えます。
金融緩和政策が発表されれば、景気回復への期待感から株価は下がります。
また『消費税の増税』が決まると、増税前までに高額な買い物をしようという”駆け込み需要”が生まれるため、住宅・不動産などの銘柄は上昇することになります。
そのほか、国内の政局が不安定になったり、近隣諸国との間に政治問題が起きたりすると、株式市場全体が下がることあります。
- 金融政策が株価に及ぼす影響
金融政策はお金をコントロールしようとする国の作戦です。
相場への影響や株価への影響を具体的な金融政策で解説します。
自然災害、天候
地震や台風といった災害が発生すると市場全体が下落するものの、建設関連など一部の銘柄では復興需要を先取りして急騰することがあります。
アメリカではハリケーン、タイでは洪水など、日本と密接な関係を持つ自然災害も、日本市場の影響を与えることがあります。
食品会社や飲料会社などは、天候に影響を受けやすい業種です。
たとえばビール会社は、夏が猛暑になるか冷夏になるかで大きく売上高が異なります。
海外市場
『アメリカがくしゃみをすると日本は風邪をひく』という言葉があります。
米国株式市場が下がると、日本の株式市場はつられて急落します。
日本市場が日中軟調に推移していると思ったら、すぐ後に始まった中国市場の好調に影響されて息を吹き返すといったケースもあるので、海外の動向にも気を配った方が良いでしょう。
個別要因
『企業努力の成果』による株価への影響をいくつか見ていきましょう。
企業の業績
株価を動かす要因の中でもインパクトが強いのが、企業業績です。
好業績企業には、新製品の開発、設備投資、配当金の分配などが期待でき、その企業の価値が高まることが予測されるため、株価は上がります。
企業の業績については、既に終わった年度の数値より、次年度以降の数値の方が注目されます。
そのため、決算で『思ったより利益が出ていなかった』という業績になれば黒字であろうと、株は売られます。
また今期・来期の業績予測が悪かったりする場合も、売り材料として株価が下がります。
M&Aや株式分割、増資
『株式公開買付(TOB)』や『マネジメント・バイアウト(MBO)』のニュースが流れたり、自社の株を買う『自己株式の取得』、株を買いやすい単位に分ける『株式分割』が発表されたりすると、株価はプラスに作用することがあります。
TOBとMBOの用語解説
TOBとは、ある会社の株を大量取得するために、買い付け価格や期間を宣言して、不特定多数の株主から株を買い付ける行為のことです。
合併・買収の手段として使われます。
MBOとは、その会社の経営陣による買収のことです。
例えば、オーナーでない経営者が、オーナー経営者から事業を買収し、新しい会社として独立したい時などに行います。
反対に株式を新たに発行する『公募増資』が発表されると、株価は大きく下がるケースがあります。
増資によって発行済み株式数が増えることで、1株当たりの価値が薄まると考えられるためです。
需要と供給要因
市場全体の要因と個別要因の影響により、投資家の動向を左右し、株の需要と供給に影響を及ぼします。
株価に直接影響を及ぼす投資家には、外国人投資家、金融機関などの機関投資家、個人投資家などが挙げられます。
日本の株式市場には、海外の年金基金、投資信託、保険会社、ヘッジファンドなどの外国人投資家の売買シェアが5割以上を占めています。
つまり、外国人の関心に株価が大きく左右されるということです。
ここでのポイントをまとめよう
- 株価は需要と供給のバランスによって変動する。
- 需要と供給に影響与える要因は『市場全体の要因』と『個別要因』がある。
- 市場全体の要因の例
- 景気
- 為替
- 政策
- 災害等
- 個別要因の例
- 業績
- M&A
- 株式分割等
- 投資家の間で起こる需要と供給には、海外投資家が5割以上を占めている。