
四季報はファンダメンタルズ分析において情報源としての必須アイテムです。
投資家としての必要な知識を前提に構成されていますが、就活生や新社会、学生にもご活用いただける内容です。
この記事で読み方をマスターすれば、社会に対する見方も変わることでしょう。
投資家のバイブルから情報を読み取る
『会社四季報』は、企業の四半期決算シーズンに合わせて年に4回発刊されます。
発売日は3月、6月、9月、12月の各月の15日ごろに書店等で入手できるようになります。
ちなみに四半期シーズンとは企業決算日(多くは3月末決算)を基準に、1年間を1月~3月、4月~6月、7月~9月、10月~12月の期間に分割したものです。
四季報に掲載されている情報量は多いですが、一つずつ整理して見ていけば難なく処理していけます。
まずは、基本をしっかり押さえていきましょう。
次の画像は、特に注目したい項目についてナンバリングしたものです。
用語の意味とともに解説していきます。

①証券コード・社名

日本の証券取引所に上場する企業には、トヨタ自動車【7203】、yahoo【4689】のように、4桁の銘柄コードが付与されています。
銘柄コードは、ある程度業種別に特定の番号帯が割り振られています。
しかし、上場企業が増加したことによってコード番号が不足したため、小型株には業種に関係なく2000~4000番台が割り当てられることがあります。
なお四季報に掲載されている企業は、社名順ではなく銘柄コード順に並べています。
この欄には、銘柄コードや社名のほかに、決算期や設立年・上場年、特色などが書かれています。
【連結事業】の後に続くのは、部門別売上高構成比です、
海外で事業展開している企業の場合は、【海外】として海外売上比率も記載されます。

②本文記事

四季報編集部が独自に取材した各社の状況をまとめています。
2段落構成で、前半は主に今期・来期の業績または見通しを解説。
後半は、最近のトピックスや中期的な展望を載せています。
画像にある極洋の前半は【反落】ですが、このほかに【増益】【連続増益】【停滞】【横ばい圏】【赤字続く】といった表記があります。
これは、企業の状況を一言で表す見出しとして付されているものです。
前半部分を読むだけでも、その会社が伸びているのか、あるいは今後落ち込むのかが判断できるので便利です。
③本社・時価総額順位

この欄では、本社所在地や電話番号、従業員数、平均年齢などの基本的な会社データが記載されています。
【証券】の行頭には、企業が上場している市場名が記載されています。
【業種別時価総額順位】では、同一業種内の順位を確認できます。
市場の名称 | 四季報での表記 | |
---|---|---|
東京証券取引所 | 一部 | 東京 |
二部 | 東京2 | |
マザーズ | 東京マ | |
ジャスダック | JQ | |
名古屋証券取引所 | 一部 | 名古屋 |
二部 | 名古屋2 | |
セントレックス | 名古屋セ | |
福岡証券取引所 | ー | 福岡 |
Q-Board | 福岡Q | |
札幌証券取引所 | ー | 札幌 |
アンビシャス | 札幌ア |
株式を流通させる場所が証券取引所(市場)になります。
日本で最も大きな取引所は東京証券取引所で、株主数や時価総額などに応じて、一部・二部に分かれています。
また、新興企業向けの市場としてマザーズがあります。
なお、東京証券取引所は2022年に『プライム市場・スタンダード市場・グロース市場』の3つに区分が変更されます。
- 東京証券取引所の新市場区分基準を解説
2022年4月に新たに3区分されるプライム市場、スタンダード市場、グロース市場の基準や新制度の目的を解説しています。
新制度の目的から投資のヒントも見出すことができるでしょう。
投資家は、証券会社を通して各市場に上場している株を売買します。
東証や大証、ジャスダックに上場している銘柄は、どの証券会社でも取り扱っていますが、名証・札証・福証・アンビシャス・Q-boardの銘柄については取り扱ってない場合もあります。
大抵の企業の株式はは、東証かジャスダックなので参考程度で良いでしょう。
④直近の業績

売上高や利益など、会社の業績である『損益計算書』の数値が数年分掲載されています。
基本的に、企業が発表する『決算短信』の実績に基づいた数値です。
合わせて四季報による今期と来期の予測数値が載せられます。
一番下の段は、会社が発表した業績予測です。
冒頭にある
『連』は、連結決算
『中』は、中間決算(第二四半期決算)
『四』は、第一四半期・第三四半期決算
『会』は、会社発表の業績予測
という意味であり、このほかに
『単』:単独決算
というものもあります。
後に続く『13.3』といった数字は、決算期を表すものです。
この場合は2013年3月期(2012年4月から2013年3月までの1年間)という意味です。
売上高 | 営業上の収入 |
営業利益 | 売上高-売上原価-販売費及び一般管理費 で算出される本業で稼いだ利益を表す |
経常利益 | 営業利益+営業外利益(受取利息や受取配当金など)-営業外利益(支払利息など) で算出される企業活動全体の収益性を示す指標といえる |
純利益 | 税引き前利益-法人税等 で算出される最終利益。純益、当期利益とも呼ばれる。 |
1株益 | 一株当たりの純利益。純利益を発行済み株式数で割ったもの |
1株配 | 1株当たりの年間配当額。 |
時系列に並べられた業績推移のチェックポイント
業績欄では、売上高や経常利益が前期・今期・来期と拡大傾向(または縮小傾向)に推移しているかをチェックしましょう。
新年度予測値が出ているかどうかも確認します。
本決算を終えた次の四季報には、新しい年度の予測値が加わります。
特に新年度の予測値は注目度が高いため、サプライズ要因として株価に反映されることがあります。
⑤配当

【配当】について、1年に2回の配当が実施される場合は内訳が記載されます。
配当回数は、多くの企業で年に1回、もしくは2回ですが、稀に年4回配当される企業もあります。
右側の配当金は1株当たりの配当金額です。
例にしている画像にはありませんが、中間期や四半期の配当がなされている場合は、その旨が表記されます。
『特』と記載されていれば、特別配当金を意味します。
『記』は記念配当を示します。
これは、業績が特に好調だった時や『創立〇年』などを記念して実施される配当です。
『今回は配当金を分配しましたが、今後実施するかどうかはわからない』という一時的な配当であることを意味しています。
『予想配当利回り』は、1株当たりの年間配当金を現在の株価で割った数値です。
最初に迎える決算期の予想配当額を対象に算出されています。
配当でチェックしておきたいポイント
配当額を前の期より増やすことを『増配』と言います。
増配の発表も株価が上がる要因になります。
基本的には何年にも渡って増配しているような企業は、継続的な成長を実現しているということであり、かつ株主への利益還元に積極的な企業として評価できます。
※すべての企業が、増配しているからと言って『継続的な成長と利益還元に積極的である』と評価できるわけでありません。
⑥矢印は短期的な業績変動を表す

今期の営業利益の予測値について、四季報の前号と比較してどのように修正されたかを表したものです。
矢印の向きは、本数と合わせて5パターンあります。
いずれも、短期的での業績変動が視覚的にわかるので便利です。
『好業績な割安株』を探しており、上昇トレンドを掴むためには、業績の上振れ傾向をいち早く察知することが必要です。
営業歴の予測値に表記される矢印は、割安銘柄かつ上昇トレンドの可能性を判断するのに役立つサインになります。
単に『上向き矢印2本』が表示されている銘柄を探すだけでも参考になります。
これに加え、前号と前々号を比較してみると、業績予測を上回る勢いで成長している優良銘柄を見つけ出すこともできることでしょう。
記号 | ↓ ↓ 大幅減額 | ↓ 減額 | → 前号並み | ↑ 増額 | ↑ ↑ 大幅増額 |
前号からの今期 営業利益の修正率 | 30%以上 の減少 | 5~30% の減少 | 5%未満の増加 又は減少 | 5~30% 未満の増加 | 30%以上 増加 |
⑦会社の財務状況

財務諸表である『貸借対照表(B/S)』『損益計算書(P/L)』『キャッシュフロー計算書(CF)』といった財務状況が一部抜粋して並んでいます。
【株式】は直近の株式関連データがまとめられており、一番右上の数値は、その時点の発行済み株式数を表します。
『単位』とは、1単元が何株であるかを示します。
更に砕くと、1売買単位当たりの株式数になります。
多くの企業では100株を1単元(1単位)として取引されますが、中には200株単位、1000株単位で取引される場合もあります。
『時価総額』とは、発行済み株式数×株価で算出される数値で、企業価値や規模を示す指標の一つです。
【財務】は貸借対照表を要約した数値が掲載されています。
数値元は各社が発表する『決算短信』をベースに並べられています。
- 純資産
会社が保有する全ての資産を足したが数です。
企業の大きさを表す指標の一つで、銀行からの借金や、株主からの預かったお金もここに含まれます。 - 自己資産
総資産のうち、株主などから調達した資本金と、経営活動から得られた剰余金とを合計したものです。 - 自己資本比率
総資産に占める自己資本の割合で、高いほど経営が安定します。
業界にもよりますが、平均は40%程度です。 - 有利子負債
利子をつけて返済する必要がある負債(借金)の合計額です。
【指標等】では、どれくらい効率よく経営を行っているのかがわかる指標が載っています。
- ROE
自己資本利益率のことで、株主から預かった資本を元手に『どれくらい利益を生み出すことができたか』を図る収益力の指標です。 - ROA
純資産利益率のことで、会社が土地や建物、工場、現金などの資産を使って『どれくらい利益を生み出したか』を表す指標です。
【キャッシュフロー】では、現金の増減など、お金の流れを表すデータを掲載しています。
- 営業CF
本業による現金収支です。
設備投資があまり必要ない企業であれば、営業利益や経常利益の0.6倍程度です。
製造業のように設備投資が必要な企業は、営業利益や経常利益の1倍程度が標準的です。 - 投資CF
設備投資や企業買収などに伴う現金収支です。
大抵の場合は赤字であり、営業CFの範囲内に収まっていれば理想と言えるでしょう。 - 財務CF
資金調達活動に伴う現金収支です。
プラスであれば、借金による現金借入額が増加している可能性があります。
逆にマイナスであれば、借金の返済といったケースが考えられます。
⑧資本異動

株を発行して企業は資金を調達しますが、発行済みの株式数を増やしたり減らしたりすることがあります。
このことを『資本異動』といい、四季報では、実施された年月と内容が掲載されます。
- 公
公募増資という意味です。
広く一般に株主を募集して、資金調達したことを示します。 - 三者
第三者割当増資のことです。
業務的提携先や取引先など、特定された相手方にだけ、株式を発行し資金を調達する方法です。 - 分
株式分割のことで、株式を1株から2株に分割して増加したという意味です。 - 消却
市場から買ってきた自社の株式を消却したことを示します。
消却した分、発行済株式数は減少します。
⑨株式チャート

チャート欄には月足チャートが表示されます。
直近数年分の株価の動きを大まかに把握することができます。
右側の株価指標欄には、基本的な指標が記載されています。
- 予想PER
株価を一株当たり純利益(EPS)で割ったものです。
数値が低いほど、割安と考えます。 - PBR
株価を一株当たりの純資産(BPS)で割ったもので、割安を測る水準です。
最後に、本記事読み終えた投資家を目指す読者にメッセージ
当記事にまとめられた四季報の読み方は、基本的事項をまとめたものにすぎません。
また一部の項目について詳しい話は記載せず、一般論だけを述べたものも含まれています。
一つ一つの四季報に記載されている項目の数値を正確に読み取ることが、投資家にとっては必要不可欠です。
『この数値とこの数値が良いからこの企業の株は買いだ』と安易に考えては決していけません。
財務諸表から読み取れる数値に込められている意味や数字のカラクリを知ることで、会社の状況を真に捉えることができます。
数値はただの数です。
常にその数値にある背後を捉えるように、これからは意識していきましょう。
- 四季報から投資銘柄を選定する
四季報の読み方が分かったところで実際にどういった基準で銘柄を選んでいけばいいのかを学んでいきましょう - 株式投資のスタートは『投資スタンス』を決めることから始まる
自分の投資に対する姿勢が定まっていない、例えば長期で保有するか短期で売買するかなどまだピンとこない方は、一度確認しましょう。投資スタンスによって選定すべき銘柄も変わってきます。