
定性分析は、会社の質的な面を分析し、中長期の投資に役立てることができます。
企業の成長性、将来性を考える上で独自の強みや売上拡大余地は重要なポイントになります。
独自の強みと売上の拡大余地が成長に直結する
定性分析は、企業の数字には表れない側面を分析する手法で、財務諸表分析を補うことができます。
株主は企業の成長性に関心があり、その成長の可能性を知るためには『企業独自の強み』と『売上拡大余地』を分析することが必要になります。
独自の強み(参入障壁)とは
独自の強みは定性分析において、重要なポイントです。
『真似されない特色はあるのか』『その事業への参集障壁は高いかどうか』などが独自の強みになります。
もし独自の強みがなければ、他社よって簡単に真似されてしまうので一見儲けが出ているようでも、すぐに売上が減少(または見込みがなくなる)に直面することになります。
何故ならそこには参入障壁が低く、新規参入者によって競争は激化し、市場顧客の取り合いによって価格競争が起こるため低価格化による利益の圧迫を招くからです。
- 高付加価値
独自の(質の高い)製品やサービスを提供する力。 - コスト競争力
他社に真似できないような低コストで製造、提供できる力。 - ブランド力
ブランドに対するファンが多い。 - スイッチングコスト
他社の製品やサービスに乗り換えるコストや手間のこと。
乗り換えコストが高いと、よほどのことがない限り乗り換えをしないため、顧客の囲い込みができる。 - ネットワーク効果
利用者が増えることで価値が増す。
オークションやフリマ、SNSが典型例です。
業界標準を握っている企業は品質の高さよりも利用者の数を強みにしています。 - 規模のメリット
コモディティ商品(どの企業が提供しても品質に差はなく、価格競争になっている商品)を提供する分野で有効。
いわゆる薄利多売戦略で優位に立てる。

売上の拡大余地(市場の開拓余地)とは
独自の強みがあれば、市場の開拓余地(成長余地)について考えてみましょう。
まだ普及率が低く売上規模が小さい場合には、拡大余地が大きいと考えてよいです。
すでに普及率が高ければ、拡大余地は小さいと言えます。
国内では普及率が高くても、新規に海外展開で市場を拡大する事業計画があれば、成長余地は一気に拡大します。
ユニクロを展開するファーストリテイリングを例に見てみましょう
同社は1998年に1900円のフリースを販売したり、東京の原宿店に店舗を構えたことが話題になりました。
当時はまだ珍しく、その時点では拡大余地は大きかったと言えます。
現在では日本全国に店舗を構える大企業で、国内においての成長余地は限られたと言えますが、海外展開を行っているため、拡大余地は広がったと言えます。
2021年6月時点では国外に1400店舗ほど保有していますが、一部の国に1店舗しか構えていないところもあるので、まだまだ拡大余地はあると捉えることができます。
またファーストリテイリングは英語を社内公用語に採用しているので、海外展開への意識も高いことがわかります。
市場開拓のほかに、顧客層によって成長余地を見出すケースもあります。
たとえば子供だけを対象にしていた製品・サービスを若者、大人、年配者へ展開したり、男性から女性に広がったりする可能性を検討してみましょう
独自の強みを持つ技術を生かして、新しいビジネスを展開するようなケースもあります。
例えば富士フィルムは応用展開が上手な企業です。
フィルムやカメラで培った材料技術や画像技術をベースに、衣料品や化粧品、半導体関連、セキュリティ関連、電子書籍の制作ソフトなど、幅広いビジネスを創出し、展開しています。
ここでのポイントをまとめよう
- 成長性=独自の強み×売上拡大余地を使用して定性分析しよう
- 独自の強みは『高付加価値』『コスト競争力』『ブランド力』『ブランド力』『スイッチングコスト』『ネットワーク効果』『規模のメリット』の6つの指標がある
- 拡大余地は、市場に対して展開できる地域(又は国)があるか検討してみよう
- 事業の多角化も売上の拡大余地になる
- 経営者の質を見極める【基礎編】
成長性があり、有望な事業でも張りぼて経営者ではそのチャンスを無駄にします。
経営者の質も合わせてチェックすることで、投資判断の質を高めていきましょう。